
これらの辺の比が等しいことから, \frac{\Delta s}{\Delta x}=\frac{t}{h} が成り立つことに注意すると, 次の有限変換定理を得る.
\bigtriangleup{\rm{PP’P”}}
=\frac{1}{2}h\Delta s
=\frac{1}{2}t\Delta x
=\frac{1}{2}\mbox{□}{\rm{QQ’R’R}}
t,yをxの関数とみて, t=t(x),y=y(x)(=f(x))と表す. 点{\rm{P}}(x,y(x))であった. 曲線Cと直線{\rm{OP}}で囲まれる部分を\Sigmaとする.

\Sigma
=\lim_{\Delta x\rightarrow 0}\sum_{k=0}^{n-1}\frac{1}{2}t(x_k)\Delta x
=\frac{1}{2}\int_0^x t(x) dx
このように,\Sigmaの求積において, t(x)が重要な役割をすることがわかる. ライプニッツは,特にこの変数t(x)を resectaと名付けた.
はじめの図において, 線分{\rm{PQ}}に着目することで,
t(x)=y(x)-x\frac{\Delta y}{\Delta x}
\longrightarrow
y(x)-x y'(x)
\hspace{20pt}
(\Delta x \rightarrow 0)
を得る.
ここで,y'(x)は,y(x)の導関数である.
y'(x)は,点{\rm{P}}における接線の傾きであるから, 上の関係式は, resecta t(x)を介して, 求積問題と接線問題をつなげる重要な関係式であると 見ることができる.
ライプニッツは,上で述べた変換定理を4分円に適用し, その面積の級数を用いた表示に成功した. 今日では,4分円の面積は\frac{\pi}{4}であることが知られているので, この級数表示は,\piの級数表示としても有名である.
中心が{\rm{M}}(a,0)で半径がaの半円(x-a)^2+y^2=a^2を考える. 点{\rm{P}}(x,y)とし, 点{\rm{P}}を接点とする接線と y軸との交点を{\rm{T}}(0,t)とする.

\Sigma
=\frac{1}{2}\int_0^x t(x) dx
=\frac{1}{2}\left\{tx-\int_0^t x(t) dt\right\}
=\frac{1}{2}tx-a\int_0^t \frac{t^2}{a^2+t^2} dt
が成り立つ.
ここで,最右辺の積分が,
\displaystyle\int_0^t \frac{t^2}{a^2+t^2} dt
=\displaystyle\int_0^t \frac{\left(\frac{t}{a}\right)^2}{1+\left(\frac{t}{a}\right)^2} dt
=\displaystyle\int_0^t
\left\{
\left(\frac{t}{a}\right)^2-\left(\frac{t}{a}\right)^4+\cdots\right\} dt
=a\left\{
\frac{1}{3}\left(\frac{t}{a}\right)^3-\frac{1}{5}\left(\frac{t}{a}\right)^5+\cdots
\right\}
と級数展開できることは,当時のライプニッツにおいては既知であった.
これにより, 扇型{\rm{OMP}}の面積は,
\Sigma+\bigtriangleup{\rm{OMP}}
=\frac{1}{2}tx-a\int_0^t \frac{t^2}{a^2+t^2} dt+\frac{1}{2}ay
=at-a^2\left\{
\frac{1}{3}\left(\frac{t}{a}\right)^3-\frac{1}{5}\left(\frac{t}{a}\right)^5+\cdots
\right\}
=a^2\left\{
\left(\frac{t}{a}\right)+
\frac{1}{3}\left(\frac{t}{a}\right)^3-\frac{1}{5}\left(\frac{t}{a}\right)^5+\cdots
\right\}
と計算できる.
最後に,a=t=1とすることで, (単位円の)4分円の面積は, \int_0^1 y(x) dx = 1-\frac{1}{3}+\frac{1}{5}-\frac{1}{7}+\cdots と求められる.
この右辺の級数は,
グレゴリー・ライプニッツ級数
と呼ばれている. もし直接に左辺の積分を行おうとすると, \int_0^1\sqrt{x(2a-x)}dxという無理式の積分を扱わなければならない. これをライプニッツは変換定理により乗り越えたのである. また,(単位円の)4分円の面積は,\frac{\pi}{4}であることを用いると, 次の良く知られた\piの級数表示が得られる. \frac{\pi}{4} = 1-\frac{1}{3}+\frac{1}{5}-\frac{1}{7}+\cdots
この記事は, [中村1980], [上垣2006] を参考にさせていただいています.