関数\(f(x)\)において, 変数\(x\)が\(a\)と異なる値をとりながら\(a\)に限りなく近づくとき, それに応じて, \(f(x)\)の値がある一定の値\(\alpha\)に近づく場合, この値\(\alpha\)を \(x\to a\)のときの関数\(f(x)\)の極限値 または, 極限 といい,次のように表す: $$\alpha=\lim_{x\to a}f(x)$$
ある実数\(\alpha,\beta\)に対して,
\(\displaystyle\lim_{x\to a}f(x)=\alpha,
\displaystyle\lim_{x\to a}g(x)=\beta\)
が成り立つとする.
このとき,
$$\displaystyle\lim_{x\to a}\{kf(x)+lg(x)\}=k\alpha+l\beta$$
$$\displaystyle\lim_{x\to a}f(x)g(x)=\alpha\beta$$
$$\displaystyle\lim_{x\to a}\frac{f(x)}{g(x)}=\frac{\alpha}{\beta}$$
が成り立つ.
ただし,\(k,l\)は定数であり,
3つ目の公式については,\(\beta\ne0\)を仮定する.
さらに次も成り立つ.
\(a\)の近くの全ての\(x\)に対して, \(f(x)\leq g(x) \hspace{5pt}\Longrightarrow\hspace{5pt} \alpha \leq \beta\)
\(a\)の近くの全ての\(x\)に対して, \(f(x)\leq h(x) \leq g(x) \)かつ\(\alpha=\beta \hspace{5pt}\Longrightarrow\hspace{5pt} \displaystyle\lim_{x\to a}h(x)=\alpha\)
最後の主張は「はさみうちの原理」と呼ばれる.
また, \(x\to\infty\)や\(x\to-\infty\)の場合の極限の定義や, 発散する場合の極限の定義についても紹介する.
さらに, 上で述べた関数の極限の基本的性質は, \(x\to\infty\)や\(x\to-\infty\)の場合にも成り立つことにも言及する.
注意:
高校数学の関数の極限の定義では,
「限りなく近づく」という曖昧な表現が使われている.
これを厳密に定義するには,\(\varepsilon-\delta\)論法
と呼ばれる議論が必要になるが,残念ながら高校数学の範囲を超えてしまう.
そのため,上で述べた関数の極限の基本的性質についても
高校数学の範囲では厳密に証明することができない.
\(\varepsilon-\delta\)論法
については,
関数の極限(ε-δ論法)定義と四則演算その1
を参照してほしい.