数列の極限

数列の極限を次のように定義する.

数列\(\{a_n\}\)において, 項の番号\(n\)が限りなく大きくすると, 項の値\(a_n\)がある値\(\alpha\)に近づくとき, この値\(\alpha\)を 数列\(\{a_n\}\)の極限値 または, 極限 といい,次のように表す: $$\alpha=\lim_{n\to\infty}a_n$$

また,極限の基本的性質として, 数列の値同士の四則演算と極限をとる操作には互換性があることや, はさみうちの原理などについても述べる.

ある実数\(\alpha,\beta\)に対して, \(\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=\alpha, \displaystyle\lim_{n\to\infty}b_n=\beta\) が成り立つとする. このとき, $$\displaystyle\lim_{n\to\infty}(ka_n+lb_n)=k\alpha+l\beta$$ $$\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_nb_n=\alpha\beta$$ $$\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{a_n}{b_n}=\frac{\alpha}{\beta}$$ が成り立つ. ただし,\(k,l\)は定数であり, 3つ目の公式については,\(\beta\ne0\)を仮定する.
さらに次も成り立つ.

  • 全ての\(n\)に対して, \(a_n\leq b_n \hspace{5pt}\Longrightarrow\hspace{5pt} \alpha \leq \beta\)

  • 全ての\(n\)に対して, \(a_n\leq c_n \leq b_n \)かつ\(\alpha=\beta \hspace{5pt}\Longrightarrow\hspace{5pt} \displaystyle\lim_{n\to\infty}c_n=\alpha\)

最後の主張は「はさみうちの原理」と呼ばれる.


また,次の基本的な数列の極限についても言及する.
\(k > 0\)のとき,次が成り立つ.
  • \(\lim_{n\to\infty}n^k=\infty\)

  • \(\lim_{n\to\infty}\displaystyle\frac{1}{n^k}=0\)



注意:
高校数学の数列の極限の定義では, 「限りなく近づく」という曖昧な表現が使われている. これを厳密に定義するには,\(\varepsilon-N\)論法 と呼ばれる議論が必要になるが,残念ながら高校数学の範囲を超えてしまう. そのため,上で述べた数列の極限の基本的性質についても 高校数学の範囲では厳密に証明することができない. \(\varepsilon-N\)論法 については, 数列の極限(ε-N論法)定義と基本極限 を参照してほしい.




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