加比の理

加比の理と呼ばれる次の定理を証明する. 証明は簡単だが,定理を知っていると様々な問題の見通しが良くなるだろう.
\(n\)を正の整数とする. 実数 \(a_i,b_i,p_i\)(\(i=1,2,\cdots,n\))に対して, $$ \frac{a_1}{b_1}=\frac{a_2}{b_2}=\cdots=\frac{a_n}{b_n}=k $$ が成り立つならば, $$ \frac{p_1a_1+p_2a_2+\cdots+p_na_n}{p_1b_1+p_2b_2+\cdots+p_nb_n}=k $$ が成り立つ.



次に加比の理の不等式版を紹介する. こちらも証明と合わせて知っておくと良い.
\(n\)を正の整数とする. 正の実数 \(a_i,b_i,p_i\)(\(i=1,2,\cdots,n\))に対して, \begin{equation}\label{ineq} \frac{a_1}{b_1}\leq\frac{a_2}{b_2}\leq\cdots\leq\frac{a_n}{b_n} \end{equation} が成り立つならば, $$ \frac{a_1}{b_1}\leq\frac{p_1a_1+p_2a_2+\cdots+p_na_n}{p_1b_1+p_2b_2+\cdots+p_nb_n}\leq\frac{a_n}{b_n} $$ が成り立つ. 等号が成立するのは, 仮定の不等式の等号がすべて成り立つときである.



最後に,加比の理とその不等式版の図形的な解釈を紹介する. これを知っていれば,これらの定理が当たり前であることがわかるだろう.
$$ \frac{a}{b} \hspace{10pt}\longleftrightarrow\hspace{10pt} y=\frac{a}{b}x \mbox{のグラフの傾き} \hspace{10pt}\longleftrightarrow\hspace{10pt} \mbox{2点} (0,0), (b,a) \mbox{を通る直線の傾き} $$
という対応を考えることで, 条件式を図形的に捉えることができる.

加比の理のイメージ

\(\displaystyle\frac{a_1}{b_1}=\frac{a_2}{b_2}=k\)は, 3点\((0,0), (b_1,a_1), (b_2,a_2)\)が, 同一直線(\(y=kx\))上にあるということであり, このとき, 点 \((p_1b_1+p_2b_2,p_1a_1+p_2b_2)\)も 同じ直線上にあることがわかる.

加比の理(不等式版)のイメージ

\(k_1=\displaystyle\frac{a_1}{b_1} < \frac{a_2}{b_2}=k_2\), \(\displaystyle\frac{p_1a_1+p_2a_2}{p_1b_1+p_2b_2}=k\)とすると, 直線\(y=kx\)は,下図のような平行四辺形の対角線である. 直線の傾きを比較すると, \( k_1 < k < k_2 \)が従う.



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