関数の極限と数列の極限の関係

\(\varepsilon-\delta\)論法で定義される 関数の極限(\(x\to\infty\)の場合)と, \(\varepsilon-N\)論法で定義される 数列の極限の関係について考察する.

関数\(f(x)\)に対して, $$a_n=f(n)$$ で定義される数列を考える. このとき,
$$ \lim_{x\to\infty}f(x) \hspace{10pt}\mbox{と,}\hspace{10pt} \lim_{n\to\infty}a_n =\lim_{n\to\infty}f(n) $$
は,同じものであろうか. 結論から言うと,一般的には違うものである.
例えば,反例として, 次のような例が知られている.

例. 関数\(f(x)=\sin(\pi x)\)に対して,数列 $$a_n=f(n)=\sin(\pi n)$$ を考える. このとき,任意の自然数\(n\)に対して, \(a_n=0\)なので, \(\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=0\)であるが, \(f(x)\)は定数でない周期関数なので, \(\displaystyle\lim_{n\to\infty}f(x)\)は存在しない.



まずは,一般的な場合として,次の定理を証明する.
定理. \(\alpha\)を実数とする. このとき,次の2つは同値である.
  1. \(\displaystyle\lim_{x\to\infty}f(x)=\alpha\)

  2. \(\displaystyle\lim_{n\to\infty}b_n=\infty\)をみたす 任意の数列\(\{b_n\}\)に対して, \(\displaystyle\lim_{n\to\infty}f(b_n)=\alpha\)


上の定理からもわかるように, \(\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=\displaystyle\lim_{n\to\infty}f(n)=\alpha\)であっても, \(\displaystyle\lim_{x\to\infty}f(x)=\alpha\)であるとは限らない のである. \(b_n=n\)とおくと,確かに, \(\displaystyle\lim_{n\to\infty}b_n=\infty\)が成り立つが, \(\displaystyle\lim_{x\to\infty}f(x)=\alpha\)を結論づけるためには, \(\displaystyle\lim_{n\to\infty}b_n=\infty\)をみたす全ての 数列\(\{b_n\}\)について, \(\displaystyle\lim_{x\to\infty}f(b_n)=\alpha\) を示さなければならないのである.


では,\(f(x)\)がどのような関数であれば, 数列\(a_n=f(n)\)の収束性を調べるだけで, \(x\to\infty\)での\(f(x)\)の収束性を結論付けられるだろうか. 言い換えると, \(f(x)\)がどのような関数であれば,
$$ \displaystyle\lim_{x\to\infty}f(x)=\alpha \hspace{5pt}\Longleftrightarrow\hspace{5pt} \displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=\alpha \hspace{10pt} (a_n=f(n)) $$
が成り立つであろうか. これについては,次の定理が知られている.
\(\alpha\)を実数とする. \(f(x)\)が単調増加または単調減少関数 であるとする. このとき,次の2つは同値である.
  1. \(\displaystyle\lim_{x\to\infty}f(x)=\alpha\)

  2. 数列\(b_n=n\)に対して, \(\displaystyle\lim_{n\to\infty}f(b_n)=\alpha\)

この定理を証明して本稿を終える.


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この記事は, [黒田2018] を参考にさせていただいています.