有理数の指数
指数の拡張(整数の指数)では, 指数を整数全体に拡張したのであった. ここでは, 累乗根を用いて, 有理数全体の範囲で指数を定義する.
\(a\)を正の実数とし, \(n\)を正の整数する.
このとき,\(a\)の\(\frac{1}{n}\)乗を次のように定義する.
$$
a^{\frac{1}{n}}=\sqrt[n]{a}
$$
さらに,
\(m\)を整数とするとき,
\(a\)の\(\frac{m}{n}\)乗を次のように定義する.
$$
a^{\frac{m}{n}}=\left(a^{\frac{1}{n}}\right)^m
$$
任意の有理数は
\(\frac{m}{n}\)の形で表すことができるので,
これで全ての有理数に対して,その指数を定義することができた.
累乗根の性質を用いれば, 有理数の指数についても次の指数法則が成り立つことが確認できる.
\(a>0, b>0\)とする.有理数\(r, s\)に対して,次が成り立つ.
指数法則の成立を見ても,
このような指数の拡張がいかに自然かがわかるだろう.
\(a^ra^s=a^{r+s}\) \(\hspace{10pt},\hspace{10pt}\) \(\displaystyle\frac{a^r}{a^s}=a^{r-s}\)
\(\left(a^r\right)^s=a^{rs}\)
\((ab)^r=a^rb^r\) \(\hspace{10pt},\hspace{10pt}\) \(\left(\displaystyle\frac{a}{b}\right)^r=\displaystyle\frac{a^r}{b^r}\)
無理数の指数
次に無理数の指数を定義する.
\(a\)を正の実数,\(s\)を無理数とする.
無理数\(s\)に収束する有理数列\(s_1, s_2, s_3,\cdots\)を用いて,
$$
a^{s_1}, a^{s_2}, a^{s_3}, \cdots
$$
が近づく値として,\(a^s\)を定義する.
すなわち,極限
の言葉を用いると,次のように書ける.
$$
a^s=\lim_{n\to\infty}a^{s_n}
$$
\(a>0\)とする. 例えば, \(a^{\sqrt{2}}\)は, \(\sqrt{2}=1.414\cdots\)なので,
$$a^{1}, a^{1.4}, a^{1.41}, a^{1.414}, \cdots
\longrightarrow a^{\sqrt{2}}$$
などのように定義される.
極限の性質を用いることで, 無理数の指数に対しても,指数法則が成り立つことが確認できる.